虫歯治療
虫歯の原因
私たちの口の中には、たくさんの細菌がいます。それらは口の中の食べかすに含まれる糖を栄養分として取り込み、酸をつくり出します。その酸がいつまでも口の中にとどまっていると、エナメル質(歯の表面)の成分が溶け出す「脱灰(だっかい)」という現象が起き、歯に穴があいてしまいます。これが一般的に「虫歯」といわれる状態です。
ただし、唾液には脱灰で溶けた部分を修復する成分が含まれていますので、初期段階の軽度の脱灰であれば自然に元の状態に戻ります。これを「再石灰化(さいせっかいか)」といいます。
この脱灰と再石灰化は絶えず繰り返されていますが、間食の回数が多いなど、お口の中に糖がとどまっている時間が長いと、脱灰が進んでしまいます。そうなるとせっかくの再石灰化が追いつかなくってしまい、歯は元の状態に戻らなくなるどころか、穴があいてしまうのです。
これが虫歯のはじまりです。そして、穴があいてしまった歯は、自然に元に戻ることはありません。
虫歯の進行と治療
虫歯の進行は、虫歯の意味をもつ専門用語「Caries(カリエス)」の「C」を使って表します。一般的に、初期の「CO」(シーオー)から末期の「C4」まで5段階に分けて考えます。
CO(初期)
- ●症状
- エナメル質が一時的に溶けているだけで、外見上の変化はほとんどありません。
- ●治療法
- 再石灰化で自然に修復されますので、とくに治療の必要はありません。
C1(中期)
- ●症状
- 虫歯がエナメル質内に達していますが、痛みはありません。
- ●治療法
- レジン(白い樹脂)を入れます。治療は1回で終えられます。
C2(後期 前半)
- ●症状
- 虫歯が象牙質(歯の主要部)まで達しており、冷たいものがしみます。
- ●治療法
- 患部が小さければ詰め物で、大きければ被せ物を入れます。
患部の大きさによりますが、治療回数は1~3回ほどとなります。
C3(後期 後半)
- ●症状
- 虫歯が歯髄(神経・血管)まで達しており、炎症と激痛のある歯髄炎を発症しています。
- ●治療法
- 根管治療(歯根内の歯髄を除去して、薬剤で密封する治療)を行ない、被せ物を入れます。
短ければ2~3回で終わることもありますが、長ければ数ヵ月かかることもあります。
C4(末期)
- ●症状
- 歯根だけは残っていますが、歯冠(歯肉の上に出ている部分)は残っていません。神経が死んでしまっていますので痛みは感じませんが、歯根の先に膿が溜まると、痛みや腫れがでてきます。
- ●治療法
- 可能であれば根管治療を行ないますが、半年ほどかかってしまいます。
根管治療ができない状態であれば、抜歯して入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの治療を行ないます。
このように、末期に近づくほど複雑な治療が必要になり、治療期間や治療費がかかりますので、患者さまの負担が大きくなってしまいます。早期発見・早期治療ができればそれほど負担にならずにすむので、「歯が黒く見える」「歯が痛い」などお口の中に違和感を覚えたらすぐに受診しましょう。
虫歯は予防することが大切です。予防については「予防ケア」をご覧ください。
痛みを軽減する電動麻酔注射器
当院では、虫歯治療をはじめとするさまざまな治療に、麻酔注射をするときの痛みを軽減できる、電動麻酔注射器を使っております。
手動で注入する従来の注射器は、麻酔薬を均一の力で注入できず、圧力にムラが生じることで痛みを感じます。しかし、電動麻酔注射器は均一の力で麻酔薬を注入できますので、ほとんど痛みがありません。針も、従来と比べて細いものを使うので、歯肉に刺したときの痛みを軽減できます。
また、麻酔薬を体温と同じぐらいの温度に温めてから注入することもポイントです。冷たい麻酔薬を使わないことで、さらなる痛みの軽減につながります。
麻酔注射の痛みを軽減できるので、安心して治療を受けていただけます。
歯周病
歯周病の原因
私たちの口の中にはたくさんの細菌がおり、口の中の食べかすに含まれる糖を栄養分として増えていきます。それが歯垢というひとつの塊になります。
歯垢は歯磨きで落とせるものですが、歯と歯の間、歯周ポケット(歯と歯肉の間)など、歯ブラシが届きにくい部分にはどうしても磨き残しができてしまいます。やがてそれらが歯石となりますが、歯石になってしまうと歯磨きでは落とせないので、細菌の温床となってしまいます。このようにお口の中の衛生状態が悪化すると、細菌の働きにより歯肉が炎症を起こし、腫れや出血が見られるようになります。
しかし歯周病は虫歯とは異なり、発症しても痛みがほとんどないので、自覚症状のないまま進行していきます。そのため、炎症が悪化し、症状に気づいたときには、重症になっているということも珍しくありません。
さらに症状が進行すると、歯周ポケットが深くなり、歯槽骨(歯を支える骨)が溶けはじめ、歯が揺れるようになります。そのまま放置していると、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病の進行と治療法
歯周病は、歯肉炎と歯周炎の状態に分けられます。歯肉のみが炎症している場合は歯肉炎、歯槽骨(歯を支える骨)などの組織まで広がると歯周炎となります。すべて合わせ、症状は一般的に5段階に分けて考えられます。
歯肉炎 歯周ポケット2~3mm
- ●症状
- 歯垢や歯石により歯肉が炎症を起こします。赤みや腫れがあり、歯磨きすると出血することがあります。
- ●治療法
- 歯垢・歯石を取り除きます。丁寧な歯磨きを続けることで元の歯肉に回復します。
歯周炎(初期) 歯周ポケット3~4mm
- ●症状
- 歯周ポケットに歯垢・歯石が溜まり、歯槽骨が痩せはじめます。
- ●治療法
- 歯周ポケットに溜まった歯垢・歯石を取り除きます。丁寧な歯磨きを続けることで元の歯肉に回復します。
歯周炎(中期) 歯周ポケット4~6mm
- ●症状
- 歯周ポケットの奥深くに歯垢・歯石が溜まります。炎症が広がり、歯槽骨も徐々に痩せていきます。痛みはまだありません。
- ●治療法
- 歯周ポケットに溜まった歯垢・歯石を取り除きます。場合によっては歯肉を切開し、歯周ポケットの奥深くに付着した歯垢・歯石を取り除く外科手術を行ないます。
歯周炎(後期) 歯周ポケット6~7mm以上
- ●症状
- 歯肉の腫れや赤みが強くなります。炎症が広がって歯槽骨がさらに痩せ、歯がグラグラと揺れるようになります。
ここでようやく痛みを感じるようになりますので、多くの方に自覚症状が出ます。 - ●治療法
- 歯肉を切開し、歯周ポケットの奥深くに付着した歯垢・歯石を取り除く外科手術を行ないます。
歯周炎(末期) 歯周ポケット7mm以上
- ●症状
- 歯肉が腫れ上がってブヨブヨになり、少し触れただけで血や膿が出ます。歯槽骨も大幅に少なくなります。舌や指で歯に触れると、歯がグラグラと揺れるのがはっきりわかり、歯が揺れることで咀嚼力が弱くなります。そのまま放置すると歯が抜け落ちることもあります。
- ●治療法
- 歯肉を切開し、歯周ポケットの奥深くに付着した歯垢・歯石を取り除く外科手術を行ないます。
歯を残せないほど症状が進行している場合は、抜歯して入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの治療を行ないます。
このように、末期に近づくほど外科手術などの複雑な治療が必要になり、患者さまの負担が大きくなってしまいます。早期発見が難しい病気ではありますが、日ごろからお口の様子を気にかけ、「歯石がたくさんついている」「歯肉が赤い」などお口の中に違和感を覚えたらすぐに受診しましょう。
歯周病は予防することが大切です。予防については「予防ケア」をご覧ください。
歯周病セルフチェック
歯周病は、自覚症状のないまま進行してしまう恐ろしい病気です。少しでも早く歯周病に気づけるよう、以下の表でセルフチェックをしてみましょう。ひとつでも思い当たる症状があれば、歯周病になっている可能性があますので、早めに受診してください
日ごろから歯や歯肉の状態を把握し、少しでも違和感があったらすぐに適切な治療を受け、お口の健康維持に努めることが大切です。
- 歯を磨くときに血が出る
- 朝起きたときに口の中がネバネバする
- 歯の表面を舌でさわるとザラザラする
- 口臭が気になる
- 歯肉が腫れたことがある
- 疲労時やストレスがあるときに歯肉が腫れやすい
- 歯肉の色が赤い、もしくはどす黒い
- 歯がグラグラする
- 硬いものが噛めない
- 歯肉から白い膿が出る
- 歯が浮いたような感じがする
- 歯肉が退縮して、歯と歯のあいだにすき間ができてきた
- 歯と歯のあいだに食べ物が挟まりやすい
- 歯が長く見える気がする
- 出っ歯やすきっ歯になった気がする
口腔外科
口腔外科とは
当院では、虫歯・歯周病治療のほか、口の周囲の病気を治療する口腔外科も手がけております。
口腔外科では、親知らずなどの難抜歯、顎関節症、口内炎や舌・歯肉の病変、唾液線疾患など、口の中とその周囲の病気すべてが治療の対象となります。
お口の中や顎、顔面に生じた問題は、食事や会話など日常生活に影響を及ぼすだけでなく、場合によっては見た目にも影響し、精神的なダメージにつながってしまいます。お口周りの病気を解消し、笑顔を取り戻せるよう、まずは当院までご相談ください。
なお、口腔外科は専門性の高い診療科です。当院でもできる限りの対応をいたしますが、症状によっては大学病院での診療をお勧めする場合もございますので、あらかじめご了承いただけますようお願いいたします。
親知らずの治療
当院にいらっしゃる患者さまのなかには、親知らずにお困りの方も少なくありません。
永久歯は全部で28本ありますが、親知らずは、それらが生えそろって何年も経った後に、上下左右の一番奥に生えてきます。4本全部生える方もいれば、1本も生えない方もいらっしゃいます。ただ、現代人の顎は退化の一途をたどっていますので、生えるにしても真っすぐに生えてくることは少なく、斜めまたは横向きに生えたり、半分歯肉の中に埋まったままだったり、歯肉の中に埋まったまま生えてこなかったりする方もいらっしゃいます。
親知らずというと「抜歯しなければいけない」といわれることがありますが、噛み合わせに問題がなく、虫歯や歯周病になっていなければ抜歯の必要はありません。
しかし真っすぐに生えていない場合は、歯ブラシがきちんと届かず磨き残しが多くなってしまいます。その結果、歯周ポケット(歯と歯肉の間)に汚れが溜まって歯肉の炎症を引き起こしたり、虫歯になったりすることがあります。また、斜めに生えてきて隣の歯を押し、歯並びや噛み合わせに影響してしまうこともあります。
そうなると健康な歯まで抜歯しなければならなくなる可能性が出てきてしまうので、親知らずの生え方に癖のある方は、たとえ痛みがなくても早めに抜歯することをおすすめいたします。
親知らずの腫れや痛みにお困りの方、また、特に「症状はないけど親知らずの状態を診てほしい」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ当院にお越しください。